令和7年(2022年)に高校教科情報がセンター試験科目に追加されるということで、インフラエンジニアが問題の解説をしてみました。そのpart3です。今回は、画像のデジタル化をテーマとして解説します。
part1を見ていない方はこちらをご覧ください。
第一問 問3の出題範囲
今回は第一問 問3を取り上げようと思います。出題範囲は高等学校学習指導要領「情報Ⅰ」から『情報通信ネットワークとデータの活用』のようです。次回解説する予定の問4もこの範囲に含まれるようですね。
情報通信ネットワークを介して流通するデータに着目し,情報通信ネットワークや
高等学校学習指導要領(平成30年)第2章 共通教科情報科の各科目 第1節情報Ⅰ 内容とその取扱い 情報通信ネットワークとデータの活用より引用
情報システムにより提供されるサービスを活用し,問題を発見・解決する活動を通し
て,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)情報通信ネットワークの仕組みや構成要素,プロトコルの役割及び情報セキュ
リティを確保するための方法や技術について理解すること。
(イ)データを蓄積,管理,提供する方法,情報通信ネットワークを介して情報シス
テムがサービスを提供する仕組みと特徴について理解すること。
(ウ)データを表現,蓄積するための表し方と,データを収集,整理,分析する方法
について理解し技能を身に付けること。
イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ア)目的や状況に応じて,情報通信ネットワークにおける必要な構成要素を選択す
るとともに,情報セキュリティを確保する方法について考えること。
(イ)情報システムが提供するサービスの効果的な活用について考えること。
(ウ)データの収集,整理,分析及び結果の表現の方法を適切に選択し,実行し,評
価し改善すること。
問題としては、アナログ情報をデジタル化する方法とメリットについて理解しているか確認する問題のようです。それでは早速問題を見てみたいと思います。
第一問 問3 問題

第一問 問3 解答
空欄に入る回答は下記の通りです。
- ク…0(区画の濃淡を一定の規則に従って整数値に置き換えており)
- ケ…1(量子)
- コ…0(コピーを繰り返したり、伝送したりしても画質が劣化しない)
第一問 問3 ク・ケ 解説
この問題は、「アナログ情報をデジタル化する方法」「デジタル化のメリット」を理解しているかを確認する問題ですね。問題文の中で、デジタル化の手順がイラスト化されているので、わかりやすくなっていますが、用語から適切な手順を選ぶ方式になると難しくなるかもしれません。
解答の説明
この問題を解くには、データのデジタル化についてのイメージを理解しておく必要があります。

アナログとデジタルと聞いて、思いつきやすいものとしては時計ではないでしょうか。アナログ時計の場合、1時から2時に進む間、連続して時計の針が進むと思います。それに対してデジタル時計の場合は、分の単位が0から59の間で数字が一つずつ離れて進んでいくと思います。
このように連続して数値を表現できるものをアナログデータ、数字が離れて表現できるものをデジタルデータと言います。
それぞれメリット・デメリットがあり、アナログの場合は細かな数が表現できそうに思えますが、秒針の無い時計の場合、20秒と30秒を分針で見分けるのは難しいように、あまりにも細かな数字は人によって見え方が変わってしまうことがデメリットとなります。対してデジタルの場合は1分よりも細かな秒という単位は切り捨てられ判別ができないように、区切りよりも小さな数値は識別できないことがデメリットとなります。
次にデジタル化の手順の全体像をまとめてみました。細かくは後ほど説明するので、まずは全体像を把握しましょう。

デジタル化の工程は3ステップあり「①標本化(サンプリング)」「②量子化」「③符号化(コード化)」の3つとなります。
「①標本化」はアナログの連続データを一定の間隔で区切る作業となります。この段階で細かく区切るほど、アナログデータと近い表現を残したままデジタル化をすることができます。

標本化をする際にデータの区切りを広く取ると表現の幅が狭くなってしまいますが、逆に広く取ることでアナログ時のデータに近い表現ができるようになります。写真などの画像データでイメージすると、曲線がきれいに見えるかどうかに影響します。
次に行う「②量子化」は標本化で区切った枠内のデータを一定間隔で数値化する作業です。

数値の選択肢を狭くすると、表現の幅が狭くなりますが、広く取ることでアナログ時のデータに誓い表現が可能となります。 写真などの画像データでイメージすると、 色の表現の幅となります。
最後に行うのが「③符号化」で、数値を人間が普段使用している10進数からコンピュータが理解できる2進数へ変換します。

符号化で使用する2進数は0と1だけで数値を表現する方法となり、10進数の場合は0から9まで1桁で表し、9の次の数字で桁を繰り上げますが、2進数の場合は0と1のみで表現するため、1の次の数字で桁を繰り上げます。
これらの3ステップを経て、アナログデータのデジタル化ができました。参考情報ですが、標本化と量子化は、細かくすればするほど、アナログデータに近い形でデータのデジタル化ができるのですが、その分データ量が増えるというデメリットもあります。
第一問 問3 コ 解説
この問題は「データをデジタル化するメリット」を理解しているか確認する問題となっています。
解答の解説
デジタル化のメリットは下記の4つになります。
- 演算処理ができる…音声や画像データの加工、圧縮、暗号化などが可能。誤り検知や訂正が可能。
- 一元的に扱うことができる…コンピュータ上でまとめてデータとして扱うこと(蓄積、編集、転送など)ができる。
- 劣化しにくい…0と1だけで表現されるので、修復がしやすい(ノイズが入り0.1などになったとしても、0に戻すことができる)
- 元の情報の一部が欠落する…標本化、量子化で欠落したアナログデータは元に戻すことはできない
今回の問題では、「劣化しにくい」ということが取り上げられており、「コピーを繰り返したり、伝送しても画質が劣化しない」が解答となります。
その他の選択肢
その他の選択肢についても、見ておきます。
「①ディスプレイ上で拡大してもギザギザが現れない」はデジタル画像の表現方法の一つであるベクトル表現についての話となります。

図形の表現方法は「ラスタ表現(ビットマップ表現)」と「ベクトル表現」の2種類があり、ラスター表現を使った画像をラスター画像、ベクトル表現を使った画像をベクター画像と言います。
画像処理のソフトによってどちらの表現を使うか変わりますが、クリエイター向けのAdobeのソフトウェアで言うとPhotoshopはラスター表現、Illustratorはベクトル表現を使っています。
「②データを圧縮した際,圧縮方式に関係なく完全に元の画像に戻すことができる」という選択肢は、「圧縮方式に関係なく」と言う点が不正解です。

圧縮の方式は圧縮しても元のデータに戻せる「可逆圧縮」と元に戻すことができない「非可逆圧縮」の2種類があります。
「③著作権を気にすることなくコピーして多くの人に配布することができる」に関しては、デジタルデータも著作権保護の対象となるため、不正解となります。
まとめ
今回、高校教科「情報」のセンター試験サンプル問題(大問1問3)を解説してみました。アナログとデジタルの違いは教科情報を学ぶ基礎となる部分なので、今回細かく説明をしています。もし興味があれば次回の解説も見ていただきたいと思います。



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